2012年7月9日月曜日

《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族


轩辕剑》は、漢滅亡後の400年にわたる中国分裂時代を、ようやく隋が統一した時代を背景にしています。そのへんの歴史を、おおざっぱに見てみます。

拓跋族とか宇文なんとかという人とか、あるいは独孤なんとかという人について、よりなじみやすくなるかもしれません。

間違いもあると思いますが、詳細は自分で調べてください。

中国の歴史区分を表す言葉のひとつに、“魏晋南北朝時代”があります。後漢末の混乱から、隋が中国を統一するまでの400年くらいの期間を指します。さらにその内訳が、三国時代五胡十六国時代南北朝時代ということになります。

魏・呉・蜀が中国を三分したのは三国志で有名なわけで、これが三国時代です。瞬間的に晋が中国を統一しますが、すぐに崩壊します。次の五胡十六国時代は華北における異民族の国家乱立の時代であり、漢民族は華南に東晋を立てます。

次の南北朝時代において、一貫して華北を制するのが鮮卑拓跋族です。拓跋族匈奴をさらなる北に追いやって、ついには華北を制圧して北魏を立てます。拓跋族が支配する華北の国家はあれこれ変遷するのですが、華南の漢民族国家もあれこれ変遷します--というわけで、この時代を南北朝と言います。

また、三国時代における華南の漢民族政権である呉と東晋、南北朝時代における華南の漢民族政権、宋・斉・梁・陳をもって、六朝(時代)とも呼びます。

鮮卑の拓跋族が立てた北魏は、やがて東魏西魏に分裂します。東魏が拓跋族の高氏の国家であり、西魏が拓跋族の宇文氏の国家です(つまり、《轩辕剑》において胡歌が演じる宇文拓は、姓が宇文、名が拓ということになります)。

西魏の実権を握っているのが、宇文泰という人です。宇文泰自身は匈奴系の人らしいのですが、鮮卑拓跋族と連合したようです。

西魏の宇文泰が作った軍事システムが、八柱十二国大将軍です。8人の大将軍と12の将軍のもとに、さらに24の将軍が構成されます。八柱十二国大将軍は、ほとんどは武川鎮出身者で構成されるため、武川鎮軍閥とか、関隴集団(関隴貴族集団)と呼ばれます。

やがて、政権は北周へと移っていくわけですが、いずれの創業者も、関隴集団出身者が担うことになります。

宇文泰が死んだ後、宇文一族は傀儡皇帝を立てるのではなく、一族のものを皇帝とする国家を立てます。これが北周で、まず宇文覚が帝位につきます。

しかし、実権は宇文泰の甥・宇文護が握っており、宇文氏同士の勢力争いが続きます。こうした中、宇文氏の外戚・楊堅が北周の実権を把握していきます。

楊堅は北周の権力を奪取して、隋朝を創業します。もちろん、この人も出自は武川鎮軍団です。北周時代から南朝攻略が進められていたわけですが、文帝(楊堅)は、次男の楊広と将軍・杨素に大軍を率いさせ、当時の南朝(最後の南朝)・を討伐させます。

さて、楊堅(文帝)の皇后が独孤伽羅独孤皇后)で、独孤皇后のパパが独孤信です。独孤信は匈奴系の人のようですが、宇文泰のもとで活躍した人です。

独孤信は派手な衣装を好んだ武将だそうですが、時代の流れを見る目は確かだったようで、娘を楊氏や李氏に嫁がせます。

そういうわけで、独孤伽羅は楊堅の奥さんになります。このとき、彼女は楊堅に、自分以外の女の子を産まないという誓いを立てさせます。

独孤皇后は、実際には楊堅が何人かの側室を持つことを許したようです。しかし、長男である皇太子・楊勇の女好きは許せなかったようで、次男の楊広を隋朝の二代目皇帝とします。これが煬帝で、この時代が《轩辕剑》の舞台となっています。

話は逸れますが、“独孤”といえば金庸(ドラマ)ファンにとっておなじみなのが“独孤求敗”でしょう。読んだことはありませんが、たぶん、小説においても実体は登場しないように思います。

《孤独求败》
テレビドラマ《笑傲江湖》 2000 においては、令狐冲がおしおきで洞窟暮らしをしているとき、独孤求敗の亡霊が令狐冲に武術を授けます。《射雕英雄传》 2003 では、周伯通が桃花島に幽閉されている際、彼の遊び相手である亀に名づけた名前が独孤求敗です。《神雕侠侣》 2006 では、大わし=神雕が杨过に独孤求敗の武術を伝授します。

独孤信とは中国において、むちゃくちゃ強かった武将のひとりとして語り継がれている人のひとりなのかもしれません。

さて、煬帝は、一般には暴君として語られるようです。大昔から、北と南を結ぶ大運河が進められていたのですが、楊堅はこれに本格的に着手して、煬帝がこれを引き継ぎ、ついには完成させます。しかし、この土木事業と高句麗遠征の失敗は、民衆に大きな負担を与えます。

この結果、大反乱が起こります。この混乱を制するのが、隋朝に仕えていた李淵(唐の初代皇帝)です。李淵も、出自は武川鎮軍閥です。李淵が唐朝を創業するにあたって大活躍したのが、その子である李世民(唐の二代目皇帝=太宗)です。

李世民(太宗)
李世民は、ライバルである兄弟を殺して皇帝の地位を獲得します。とはいえ、もし彼がライバルである兄弟を倒していなければ、彼自身が殺されているわけです。

そんなわけで、隋-唐とは漢民族にとっては異民族である鮮卑系の国家であるということにもなるわけですが、正史においては彼らは漢民族として位置づけられているようです--《轩辕剑》においては、正史にのっとた理解のしかたをしているように思えます。

--こうして、隋朝成立前後の歴史をざっと振り返ると、《轩辕剑》のキャラクタたちがほぼ揃います。

たぶん、隋朝を創業した楊堅(文帝)によって奪われた北周の皇子が宇文拓、独孤宁珂は独孤皇后(伽羅)の娘のように思われます。杨素は、そのまま杨素です。

もちろん、陈靖仇は陈国の皇子です。ドラマでは、パパの後主は杨素によって殺されてしまったように思います。しかし歴史的にはとても軟弱な皇帝として位置づけられているようで、楊広と杨素に攻められたときあっさりと降伏して、長安で余生をまっとうしたとのことです。

吕承志は、如烟の夢の中では皇帝になっています。彼は、如烟に対して、夢に閉じ込められたおかげで自分の目標がはっきりしたと言います。つまり、吕承志とは唐の二代目皇帝・李世民(太宗)ということになります。

問題は、张烈や玉儿たちの拓跋族です。北周・隋・唐も鮮卑系拓跋族が創業した国家であるといえるわけですが、彼らはどんな拓跋族なのでしょうか。

ドラマのなかで、剑痴と陈靖仇が拓跋について語るシーンがあって、100年前に北魏を宇文氏が立て、北魏滅亡後、拓跋族は流浪の民となってしまったようなことを語ります。

北魏が華北を制すると、中国における異民族王朝の歴史の法則にしたがって、拓跋族はどんどん漢化していきます。西魏や北周では、中国風に改めた名前を、本来の拓跋の名前に改めるなど、本来の拓跋への回帰も見られるわけですが、とはいえ漢化されてはいるわけです。

そういうわけで、张烈や玉儿たちの拓跋族たちも、中国語がとても上手なのでしょう。

なお、拓跋は辞書的にはtuò báなのですが、ドラマではtà báと発音しています。しかし、宇文拓のほうの拓はtuòと発音されています。

《轩辕剑之天之痕》插曲指紋


[《轩辕剑》についてのブログ]

《轩辕剑》 2012(1) - 胡歌、劉詩詩で失敗する
《轩辕剑》 2012(2) - 隋朝と関隴集団・拓跋族
《轩辕剑》 2012(3) - 刘诗诗、“金鹰女神”獲得

参考:宮廷女官若曦(步步惊心)-劉詩詩はブスである
参考:仙剑奇侠传三(1) “哈哈哈” 杨幂+胡歌
参考:仙剑奇侠传三(2) キャラクタとストーリー

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